白内障手術を再開しました。
2008年まで、当院は日帰り白内障手術をしていましたが、屈折矯正手術が忙しくなって、時間的余裕がなくなり、中止していましたが、昨今は、屈折矯正手術が減少して余裕ができたので、2015年より再開しました。手術内容自体は、当院と、他の眼科と大差があるわけではありません。
白内障とは、加齢、糖尿病、外傷などにより、目のレンズに相当する、水晶体が混濁、屈折力変化等で、網膜に正確な焦点を結ぶことが出来なくなり、矯正視力の低下(眼鏡をかけても見えない)を、きたす病気です。
進行を遅らせる点眼(カタリン等)は、ありますが、点眼していても、次第に進行して、手術が必要になります。
現在の白内障手術は、水晶体に穴を開けて、超音波で核を粉砕して、核と皮質を吸引除去し、人工水晶体を挿入するのが原則です。
網膜の機能が良好であれば、矯正視力が改善(95%以上)します。
60代なら90%以上が、1.0以上になりますが、80代なら、50%程度です。
網膜機能が、視力を決めるので、手術時期を待つことに意義はありません。
一人で通院出来るような人は、通院手術が可能です。
通院白内障手術の自己負担価格等は、健康保険の適応なので、他院と同様で、2〜6万円程度です。
手術用顕微鏡は、ドイツのZEISS社製から、国産のTOPCON社製に変更しました。
照明が青色光カットも使えて、網膜への光障害が減りました。
超音波手術装置は、アメリカAMO社製から、国産のNIDEK社製に変更しました。
吸引チューブがつまることなく、快適に手術できます。
眼内レンズも、変更しました。
以前使用していたワンピース型は、非常に安定して劣化も無いのですが、創口が大きいので、外傷に弱いのと、網膜等の問題で、万が一の摘出の面倒を考えて、折り畳み型に変更しました。以前から、折り畳み型の存在は知っていましたが、ALCON社の製品のように経年変化で混濁がおこったり、HOYA社の遅発性炎症がおこるのは問題で、慎重に製品を選んで(他院での評判も聞いて)レンズを選択しています。
私(院長)は多焦点眼内レンズが、発表されて直ぐに導入しました。開業前で、他の病院に出張手術していました。
良い裸眼視力のためには、非常に正確に、正視に合わせる必要があり、従来の計算式では不十分なので、眼内レンズの位置と前後面の屈折力を計算にいれた理論式を作り(日本眼科学会に発表)、そのため眼内レンズの位置を、術後のデータから多変量解析で近似しました。また、眼軸長を超音波で測定するには、水晶体での音速が、白内障により変化するという、致命的な欠陥があるために、これを原則としつつも、手術中に水晶体摘出に、スキアスコピーまたはオートレフで屈折を測定し、眼内レンズの度数を決定していました。
しかし、さらに、当時は、小切開の超音波手術ではなく、計画的嚢外摘出手術であり、切開幅が大きく、角膜乱視の変化が大きいため、特殊な道具(マロニーのケラトリング)を用いて、紫外線でも強度が減弱・劣化しない縫合糸で結びの強さをコントロール(意図的に3Dに)していました。
当時、できることはすべておこなったのですが、患者さんの満足度はいま一つでした。遠くと近くは、一応見える(視力は出る)のだが、すっきりしないとのことでした。遠くと近くの両方の映像が、同時に写っているので、確かにコントラストの低下があるはずです。これを許容できるかどうかです。
そうこうしているうちに、眼内レンズが保険適応になり、高価なレンズは実質的に使用不可能になり、やめてしまいました。『老眼鏡を使ってください』となりました。
完全でないことを理解してもらえて、高価であるのも問題がないなら、希望があれば挿入を検討します。